― 挿話 昔の話・断片 ―
《ジリヤ、最後に笑顔を見せて。
ジリヤが、逃げ延びれるように、僕に勇気を。》
[それでも、ジリヤは嫌々とするばかりで顔は涙で濡れ続ける。笑顔は、どうしても見れなかった。ぺろりと涙を舐めて、ジリヤを置いて隠れていた場から姿を現した。]
《早く、行くんだ!!!》
[囁きは慟哭。孤立無援。
嵐の様に爪を振るい牙を使い、魔物達を殺し続ける。
それも、魔眼が現れるまでのことだった。
その眼差しは、全てを曇らせる。致命傷となる筈の爪の軌道は、吸血鬼の胸に深く突き刺さるだけに留まる。
ずるり、と爪が抜けた。冬芽色の双眸が呆とした眼差しになる。思考は、熔けて、くつくつと煮えている。混濁。]
[…逃げた少女が無事逃げられ誰かに助けられると良いと考えられたのが、最後だった…**]
― 挿話・了 ―
(93) 2015/01/22(Thu) 15時半頃