−早朝:故・村長宅−
[それから、幾つかの文字をノートに書きつける。
それは夜のうちに聞いた「祈りの言葉」。
特に、この祭でしか聞いたことの無い言葉を中心に記してゆく。
ノートには、暗号のような文字が次々と並んでいる。それは一般的に「発音記号」と呼ばれるものでもある。]
んー……やはりこれは、独自の進化を遂げた言葉なんだろうな……。音を追ったところで、意味は全く推測できない。何処の言語圏との一致性も見当たらないし。ミックスされているような、独自進化したような、よく分からない感じだ。
……意味はまた村長夫人に伺うしかないか。
それにしても……
何故「エデンの園」や「贖罪の巡礼者」という言葉を聞いて、夫人は少し動揺なされたのだろう……?それそのものならば、キリスト教様式の言葉であり、英国人に聞かれてもさほど悪くはない言葉の筈だ。
[細身の煙草から煙をくゆらせ、溜息をつく。]
(この村は、どこか変だ。
何故「よそ者」をこれほどまでに嫌うのだろう。
まるで知られてはならぬ秘密があるようにも見える……)
(92) 2010/07/29(Thu) 12時半頃