[公衆のキスで騒ぐほど初ではない。さすがに廊下で事に及ばれたら嫌だが、それでも是非と言われてしまえば断れない。
拒否するより、適当に言うことをきくほうが余程楽だから。
それに、軽い接触ならば嫌いではないし。うん。
それでも、唇を舐められれば軽く眉が寄る]
普通に……。あ、いや。
[何気ない調子で訊かれ、小さな声で答えたが、視線が合うと首を振る]
……お好きにどーぞ。
[相手が趣向を凝らした行為を好むと知っているから、そう答えた。
彼の部屋に何があるか、知らないわけではないけど。
相手の要求に応えて、応えて、自分を殺すことが、この学園で過ごす自分の処世術となったのは、さていつのことか。
喧嘩するより謝るほうがいいし、傷付けるより傷付くほうがマシ。そうして誰にも甘えず過ごしてきた。
要するに、自分は怠惰な臆病者なのだろう。
部屋に入り、ぎ、ときしむベッドに腰掛ける。スケッチブックは、とりあえず勉強机に置いた]
(92) 2013/04/16(Tue) 18時頃