それでも。 頼って、くれるというの。 数多神のいるこの土地で、私みたいな紛い物を。[欠けて煤けたみすぼらしい石塊に願いを掛ける者がいると。 でも、それならば……――。 いつぞやのように大きな手が降りてくる。 遠い昔、物心ついたばかりの頃に繰り返し まだ綺麗だった毛並み(いや、石並みだろうか)と角を 優しく撫でてくれた人がいた。 瞼を閉じれば口許が震える。 喉の奥、つんと湿ったものを飲み下して笑みを刷いた] ……私を"神様"にしようというの。 なんて強欲な、人の子。 いいえ、真の神をも畏れぬ人ならざるモノ。
(91) namba 2016/06/27(Mon) 21時頃