[背中から嗚咽が聞こえる。父に、異能は発現していなかった>>1:169。眷属化した父に襲いかかられたのだ、無理も無い。
怒りに眸の色を変えながら、イワンは駆け続ける。魔都の境を抜ければ、きっと…この悪夢から解放されるからと…。]
《おにいちゃん、怖い。》
[妹の囁きに唸り声をあげる。
怒りの声、哀しみの声、…慟哭。
吸血鬼や眷属といった存在は慎ましげに暮らす日常からは遠く、見知らぬ存在だったとしても。父が変貌し、人々が魔物と化し、殺戮の宴が催されたとなれば…。]
ルルルル・・・
《ジリヤ、大丈夫。おにいちゃんがついてるから。》
[命を賭した母の為にも、逃げきってみせる。妹は必ず、この悪夢から救い出す。]
ギャン
[しかしどうした事だろう。魔都の境と思しき場を駆け抜けようとした時、まるで見えない力が働いているように、痛みが奔った。倒れてしまい、悲鳴をあげたジリヤも投げ出される。そのジリヤを気にかけながら、“それ”を見た。]
(91) 2015/01/22(Thu) 15時半頃