――? …せ…、――って
[ 覗き込んだ先、焦点の合わない瞳がこちらを映すのにはもう一度名を呼ぼうとして、――>>82頬を抓られる。
今度も痛みらしい痛みは殆ど無いまま、ただ反射的に声を漏らした。やへて、と抓られたままに間抜けた呂律で告げて、挟む指先を静かに数度、たたく。
先にその手が退かされたなら、暗灰色に恨みがましい色を僅かに乗せ、寸暇相手を見つめたかもしれない。
――いずれにせよその頬に、赤い跡を見ればただ黙って。
張り付けた薄笑いを一瞬だけ剥がせば、言葉もなく手を伸ばしかけた仕草を、気付かれたかどうか。]
……ここ、高等部だからね。
[ 続いた言葉がやや呆れたようなものになるのも、仕方が無いとは思う。こんなところでなければどんなところで会うと言うんだ、と心中で思いながら。
上げた肘をはた、と我に返ったように下し終えれば、緩く首を傾け元の表情を取り繕った。]
(91) 2014/10/03(Fri) 14時半頃