[けれど、神様にわからなくっても、おっかさんにはわかってしまうのがふしぎだ。
痺れを切らしたおっかさんが出てきてしまう前に、少女は妹に手を差し出す。
たすき掛けにした袖からは、まだ細い手首がにょっきり出ていて、その指先はすこうし硬くなっている。
一番小さな指ぬきでも少女の手にはまだ大きくて、針を使えば指先は硬くなってしまうのだ。
少女自身は見慣れた手。多分こうして妹の手を取るのも常だから、見慣れているのは自分だけでない。
それを、きにした風もなく。]
さ、はいろ。
夕餉はまだやけど、多分戸棚におせんべあったよ。
[重なったなら、その手をキュッと握り締めよう。
その小さな手が、少女にとっての全てだった。
重ならなかったら…少し寂しいけれど、仕方ない。
そんなことでめげるほど、やわな心の作りはしていなかった、はずだった。*]
(91) 2019/07/04(Thu) 00時頃