───、と…、?
[ふと視線を感じた気がして言葉を切り、頭を巡らせる。
見遣った先には、見覚えのある顔がある>>53
仕事柄…というより昔から、人の顔と名前を覚えるのに自信はある。
それでも思い出すのに少し時間がかかったのは、彼が自分の直接の担当ではなかった為に。]
山岸、さん…?
お久しぶりです。奇遇ですね。
[顧客と認識した瞬間、東蓮寺の顔ににこやかな笑みが浮かんだ。
営業用もしくは世間用のそれは、それなりに役に立っている。
以前の顧客に微笑みのまま会釈を送り、]
お買い物ですか?
[口にしながら巡る思考は別のもの。
彼の担当は鈴里だった──つまり、紹介されたのは、かの物件。
事故物件を良しとする人は、大概納得済みであるものだが、中には思ったより酷かったなどというクレームを持ち込む客もある。
さて、それであればと笑顔の裏で思考が巡るのも数瞬のこと。]
(90) 2016/09/27(Tue) 21時頃