そうかそうか。
君の名前はマユミというのか。素敵な名前じゃあないか。
…名字?君を縛るものなんかそうさ、捨ててしまえばいい。
僕はチェシャで君は言うなら…アリスなのだろうから。
[先程の様子はどうしたのやら。言い淀む仕草は一瞬のこと。
舌を回す彼女に男は一度パチクリと目を丸くさせたが、両の手を軽く叩きながら目尻を下げ、そして呼応するように呼気を震わせる。]
君は随分と我儘なアリスだね。けれど悪くない。寧ろ魅力的と言えるだろうね!
そうか、君は望まないんだね?終わりを、始まりを。でもそれじゃあ物語は始まらないさ。
砂糖で作られた菓子にしゃぶりついて、ジャムで塗りたくられたタルトを盗み食い。竈に火を付け小瓶を開けて、道草食って御使いに向かわないと。
[揶揄るように抑揚を付けて台詞は文字を綴る。真新しい頁に確かな軌跡をくっきりと残して描かれていく。]
(89) 2014/10/01(Wed) 13時半頃