[古城に灯る明りから、
パーカーも、前髪すらも、クシュンの視界を遮る
――あるいは、守るとでもいうのだろうか。
たとえば、眼前にいる、眼を細めた古吸血鬼から。
>>84少しく覗いた眼、
幼ささえ残した形のなかにあった色は
すぐさま散らばりなおす髪の陰に入り込む。]
殺されたくない。
――けど、美しさを知るためなら、死んでもいい。
ふぅん、……
まあ 君の5百年だもの。
そう心変わりはしないだろうけど。
[パーカーから手を放し、零れる水滴を、指の腹で拭う。拭う、よりも引き離すそれだ。
視線が合う。視線が合っている。それは通常のクシュンとは確かに、違うけれど、まだ足りない。確かめるには、雲間に現われる月影では足りない。ただ己ばかりが、闇夜に浮かぶ笑いの美しいことを知ったって、意味がない。]
(87) ghoti 2018/11/10(Sat) 01時半頃