― ソリテス/セントラルパーク ―
[カフェ店員がスプーンを拾い上げて、新しいものと交換してくれる。
その間に――降るような笑い声に、かつり、と響くヒールの音。
人工の緑あふれる場にはどこか不似合いな、彼女の姿。
仕立てのつややなシルクのワンピース、
くすくすと笑みの零れる薄いくちびるは、どこか酷薄めいている。
化粧直しの後、香るトワレに、彼は小さく眉根を寄せた。]
これから授業じゃないのか?
[彼女は――雪織ヨーランダは、小首を傾げる。
真面目に答えるのがいちいち面倒だ、とでも言うように。
雪織との付き合いは、家同士のものだ。
男女が親交を深める、といった目的で食事を共にしているわけでなく、時折、わがままで気まぐれなお嬢様の様子見役を頼まれるだけだ。概ね口うるさいことを言う、とでも思われているのだろう。]
(87) 2011/09/25(Sun) 18時半頃