[僕の意思とは裏腹にこぼれ続ける涙がある。でもそれは、降り注ぐ雨に、すぐに流され、もう手の届かないところへと堕ちてゆく。それはまるで、望み《エクスペクターティオ》のよう。希望《スペース》のよう。
 仕方ないよね、亡くしたんだから。
 仮初とはいえ16年間家族だった人たちを。
 Front《セレ・シェイナ》に居た大勢の友人を。
 居心地のいい場所を。
 守りたかった場所を。
 変わらないと思っていた、日常を。
 いや…変わらないはずがない事を、気付いていたはずだった。だってアリスは自分が人間ではない事に気付いていた。
 "綺羅虹の女神《ディーウァ・アルクス》"たる"虹羊"。
それこそがアリスの本質。
――虹羊とは天狼と対になる種族であるが、彼らは元々の個体数が”1”だ。”1”である彼女が滅びると再びどこかに”1”である彼女が生を受ける。その繰り返し。記憶を失いただ再びの目覚めを待つ。]
 (84) 2011/06/06(Mon) 18時半頃