[視線を送るは、圧倒的な巨体で見下ろす氷の蜥蜴。 彼が、一瞬でも毛皮に目を取られて>>70いなければ、ヴェラがこの光景を目の当たりにすることはなかっただろう。 この状態に至ることも、きっとなかったことだと思う。 声はもう、出てこない。体は変わらず、動かない。 見てみたかった未来はかき消され、迫る予感は、終焉の予感。 震えるヴェラの右手が、魔物に向かって伸ばされる。 軋む体を、意思で動かした訳ではない。 それは、ほとんど本能に従ったものだったのかもしれない。 ぴくり、ぴくり、と痙攣する右手を差し出し。 魔物に向けて『止めてくれ』と、助命の懇願をしているかのように。 魔物は沈黙でそれに答える。 そして、おそらくはヴェラの命を絶つために、鉤爪を振り上げて>>71……]
(83) 2013/06/20(Thu) 20時半頃
sol・la
ななころび
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