―― 現在:薬屋店先 ――
[断らないでくれ、と心の中で呟いていたら、どうやら神様は聞き入れてくれたみたいで。そっと小さくガッツポーズを。
まさか祖母の後押しだとは気付かない幸せな青年は、じゃあ、いこうと隣を並んで歩き出した。]
(手が繋ぎたい)
[己の欲望は見透かされていたのだろうか。コツ、と彼女の手が触れたと思ったら、次の瞬間にはきゅっと握り締められていて。ぎょっと目を見開き隣を見る。
もしかして、彼女も、自分と同じように思っていたのでは…]
あ…そ、か。
そうだな、ごめん気が付かなくて。
[昨日の今日で、疲れていないわけがないのに。ちょっと考えればわかること、むしろ、自分が気を遣わねばならなかったのに。少しでも自分に都合の良い考え方をしてしまう己が、浅ましくて、醜い。
今もふらついた彼女が、自分の肩にそっと体重を預けてくる。
しっかりしなくては、そう思うのに。
触れあった部分から感じる体温に、泣き出したくなるほど幸せを感じている。
このまま。二人ずっと、居られたらいいのに。]
(83) 2015/04/21(Tue) 19時半頃