―未完のタワー ―
[水泡の攻撃をぱちゃぱちゃと浴びたので服がぺたりと濡れていた。
肌につくのが気持ち悪いとでも言いたげな顔で座り込む。]
マレリウスの夜、なんて言われてるけどタダの襲撃事件だ。
似たようなことなんて他にも山ほどあんのになあ。
[つい先ほど《Hel》捕獲時のことを思い出そうとしたせいだろうかそんなことを呟いて。
その前に襲った村のことも一緒に思い出した。
ひっそりと、何かを隠すように暮らしていた村人達の秘密を知り、奪うために襲った。
狙いは、村人達がひた隠しにしていた少女。
抵抗する村人達を斬り捨て、閉じ込められた少女の前に立ったとき、二つの考えが浮かんだ。
一つは、このまま少女を捕えて研究所《ドック》へ戻ること。
二つめは、少女を捕らえずに、さらに力を持つモノを刈る口実とすること。
迷うことはなかった。
刈りを繰り返しながら進化する己の限界を見たかった。
飽くなき力への欲求に突き動かされていた、そんな頃だったのだ。]
(83) 2010/09/17(Fri) 17時半頃