…なあに、高等部に来ちゃダメだった。
[沈む声色は何時もの抑揚をムリに取り出して見せましょう。学生は口元に手を当てて揶揄うようにくすくすと笑いました。そして脳裏にて思うのです、自分の、本来の性別を知っているかもしれない彼が、こんな格好をしている自分のことには、軽蔑さえ辞さないかもしれない、そんな悟りにも似たことを思い浮かべ、笑みの下こころの秩序をじわじわ崩壊させて行きます。]
迷子だと云うのなら…そうね、迷子かもしれない。
そう。迷子。
迷子みたいに…帰り道が分からなくなってしまえば良いのに。
[学生は来た道を後ろ目に見ると、続く道先、アスファルトに囲まれ迷うことさえ出来ない道筋を辿り、憂に息を吐きました。視線は曇天を見上げ、彼へ落ちることはなく。高校、楽しんでる?、ありきたりな質問は喉に流し込みました。腹に下ったそれは、普通すぎて詰まらない。現実から逸脱する材料には程足りない。学生は薄い唇を開きました。]
(83) 2014/10/03(Fri) 11時頃