――なっ!?
[カンガルーのノイズにアッパーカットを食らわせようとした直後の事だった
ノイズはひらりと躱したかと思えばその拳を乍の顔面に叩きつける
これ以上に無いくらいの痛み。喧嘩などしても、その衝撃は人間の比ではない事がわかる。一瞬意識が飛びかけたが、足を出す事で倒れるのは免れたようだった
――自分の数歩離れた所でカラリ、と乾いた音がした]
っつう…。いってぇ……
[口内は切れて血が出ているだろうか。思わずその顔に触れようとした時、自分がずっと付けていたガスマスクが無い事に気が付く
自分が立っている数歩先の所に落ちたガスマスク。カンガルーの拳で半分が凹み、恐らくガスマスクとして機能する事は無いだろう
マスクが取れた乍の顔は、痛みに歪む事も無く、怒りを表すわけでも無く、ただただ無表情だった
話をしても口をパクパクと動かすだけで、それはどこかぎこちない
無感情そうなその表情と、あまりにも感情的過ぎるその言葉使いはミスマッチ過ぎて、滑稽に思えるくらいだ]
(79) 2015/03/19(Thu) 12時頃