……ここが、……も、モナコ。
[多量の人に恐れをなして思わず兄の背後にぴたりと張り付き、呟く。
恰も知ったような事を言っているが、この妹現在地の名前を間違えているなど微塵も気づいてはいない。
所詮、付け焼刃の知識はその程度の諸刃の剣なのである。]
……通り名。……とおり、な、
[《混沌の貴公子》だとか《終焉の救世主》だとかそんな言葉を耳にふんす、と鼻を鳴らす。
これでもネットでスレのひとつやふたつ建っては神と謡われるプロニート。
『まかせて』と言わんばかりに一度頷くとごそごそと服の下へと手を突っ込んで、取り出したのは――赤髪ピエロのお面。
一見、一部に人気のドラゲナイバンド世界のはじまりのピエロにも見えるがそれではなく。
大人気ファストフード店、ワクドナルドのマスコットキャラクター、ドゥナルドゥくんを精巧に再現したリアルなお面なのである。
徐にそれを装着すれば《終焉の救世主》へと向いていた民衆の視線が僅かにその背中からにょきりと顔を出す道化へと移り。]
『あ、あれは……、』
『まさか、本物か!? ……いや、そんなはずは。』
『だが……あのドゥナルドゥくんへの愛が感じられる面は……、』
(79) 2015/03/16(Mon) 23時半頃