― 回想昨日午前:本屋前 ―
[見開かれた暗灰色を前に、鳶色は反して細まった。温く満たされようとする胸の奥に、暗色が僅かに泡立ち、呼吸を軽くして行く。
強く握られた手首>>34に、じわりとした温かさが滲んだ。
だが、それも言葉を向けた頃には、なだらかに弱まり>>35。
そわりと暗灰色を窺いながら、落ちた沈黙の意味を思考は追いかける。次第に引き締めていた唇は緩み、首を傾げられた頃>>36には先に小さな隙間を作っていた。]
――そっか。
[静かに息を止めて、微笑む。
それぐらいが相応しいのだろうと、何かが順応した。一寸落ちた沈黙に熱が霧散し、秋の香りにすうっと溶けて行くのを感じた。]
…付き合うよ、覚えるまで。――友達だから。
[昨日までの自分は、一体どんな言葉を使っていたのだったか。
相手のそれもまた、どんな響きをしていたのだったか。
…一拍置いて口にした響きは、むず痒く、寂しい。
余韻の中、友人にはなれないだろうな、と鳶色を柔く細める。瞬きが落ちても、未だ鳶色は柔らかく相手を見遣って。頬を小さく緩めた。]
(79) 2014/10/09(Thu) 22時半頃