[とりあえず暑さ凌げる場所に連れて行かなければ。
背丈も体格も似ている気を失った相手を
1人で寮内まで運ぶことは少し難しい。
けれどもここから離れて人を呼びに行くことは、
後輩から逃げ出すことにもなってしまいそうで。
直ぐ傍の日陰までの距離をなんとか運ぶと
洗濯物から誰のものかわからないタオルを選んで
それを水に濡らしてセシルの額に当てて様子を窺う。
青い薔薇は其処にはなく、翡翠がそれを見ることはなく。]
[から、から…ころり]
[甘い、甘い蜜が与えられた。記憶よりも、甘い。
その余韻が醒めていくと翡翠は空洞を映す硝子玉になる。
思い出してしまった記憶に、その色を伏せて。
セシルが再び目を覚ました時、セシルの瞳は何色だろう。
それがどのような色でも翡翠は無機質な空洞の色を
その裡に隠してセシルに薄く微笑みかけて。**]
(78) 2010/09/04(Sat) 03時頃