["患者さん"と言っても内科の診察室で医師であるスティーブンの手伝いをするだけだ。この時期は体調を崩す人が多くて、看護士は時間制で交代をしながら仕事をしていた。
次はこの人ね、と問診票を受け取った。
患者の名前は「ベネット・スタンフォード」。名前を再度確かめると診察室の扉を開けてその患者の名前を呼んだ。]
ベネット・スタンフォードさん。
[名前を呼ぶと一人の青年が椅子から立ち上がり向かって来た。マスクにコート、見た目は風邪のようだけど。
彼を診察室へ案内をした。先生の診断はやはり風邪。そして注射を打つように彼に言うとカルテに向かって筆を滑らせる。
注射くらい出来るだろ、と目線で言われて渋々準備を進めて患者である彼の腕を捲ってアルコールで消毒を行った。
先程エマに注射について怒られたばかりで、全く気が進まない。出来ることなら注射は打ちたくないのだが、この場にいる看護士は自分しかいなかった。]
…………。
[注射は打たなくても大丈夫なんじゃないかな、なんて淡い期待を抱いてちらりと彼に視線を向けた。不意に視線が合ってしまったようで、驚いて思わず笑みを浮かべて視線を彼の腕に戻した。]
(77) BAlliance 2011/11/27(Sun) 03時半頃