― 『バー ファミリア』 6:00前 ―
[喫茶トワイライトの近くの大通りにあるごく普通の紳士用品店。
その店の裏手、人通りの少ない裏路地側に地下へと続く階段がある。
地下二階まで続く階段の上にも下にも、どの階の扉にも看板らしい表記もはなく、
ただ“MENBERS ONLY”と書かれた小さなプレートがかかるだけ。
営業しているのか―そもそも店があるのかすら判然としないそんな扉の奥に男が店主を務めるバーはある。]
さぁて。そろそろ店じまいだ。いい加減帰ってくれないかな?
[柔和な笑みを浮かべてボックス席やカウンターに座る常連たちにいつもの追い出しの台詞を告げた。
男の名はデニス・ゴドウィン このバーの店主である。
店には6席のカウンターと細い通路を挟んで4人掛けのテーブル席が2組。
両手の指と少しで足りてしまう人数で満席の狭い店内。
今宵はその半分も埋まっていないが概ねいつものこと。
そして客は全員男。これもいつものこと。
下の階の部屋を使っていた客にも声をかけ追い出しにかかるも足並みは鈍い。それもまたいつものことで席を立つ気配のない客たちを回って今宵の代金を徴収していく。]
(77) 2015/08/01(Sat) 20時頃