[大丈夫、と自分に言い聞かせながら、夜の空を飛ぶ。
梟は、羽音を立てない。私の耳に届くのは、風を切る音だけで。
私は大丈夫なのに、それなのに、風を切るその音は、まるで泣いているように聞こえた。
私の心が、そう聞かせるのかしら。
それとも、私の代わりに泣いているのかしら。
そんな感傷めいたことを考えて。
名前を、呼ばれた>>74ような気がした。
それは、聞こえるはずのない声。いくら梟の聴力が優れているといっても、ここまで届くはずがない。そもそも、誰かが私を呼ぶなんて、そんなことはあり得ないのに。
とうとう幻聴まで聞こえるようになったのかしら。
聴力が優れているということと、存在しない音まで聞こえるというのは、全然違うと思うのだけれど。
口元が、苦く歪む。私、諦めることには慣れているつもりだったのに。
諦めていたはずの自由が手に入ってしまったから、欲張りになってしまったのかしら]
(75) takicchi 2015/07/19(Sun) 15時半頃