せ、…ッ、――
[ 今度は下げ損ねた手を引かれ、顔が近づけば声が塞がれる。
間を割り入るそれに、舌先に走る液体に肩を震わせ、受け入れるままに咽喉奥へとそれを流し込んだ。
――苦い、と――久々の感覚に顔を歪める。現実の味。目の前の相手と確かに息を重ねたと思い知らされるそれ。
やがて“甘い夢”とひんやりとした温度で、しかし乞う声色>>41が耳に届けば、平生の表情は未だ取り戻せないままに。逃げる、と現実のそれを求める言葉には小さく息を潜めた。
――名前を呼ばれ、髪を撫ぜられるのには緩く昇る熱に身を硬くしては。
送り狼、と揶揄うような声を聞きながら腰を上げ、頬辺りに落ちかかる髪の下へと手を伸ばした。
そのまま口端へと同じ苦味を残すそれを掠らせて、その耳朶へと口元を移らせる。]
……また、後で。――牽制どうも、先輩。
[ 余裕もなければ、思うまま浅く声を落とす。避けられるようならただ静かに、体を離しただろうが。]
(75) 2014/10/07(Tue) 14時頃