「…溺れずに、前に泳げるかな。」
受け取る際には小声で自嘲を。暫く明るく咲き誇る花を見つめ、漸くお代を払っていないことに気付いては慌てて財布を取り出した。「いくらですか、」彼女が店員へ向けたのか何か、褒めた言葉は耳に通します。確かに僕も、目前に腰に手を当て立つこの店員>>0:389に惚れたくなる気持ちも分かると変な思いを浮上させては可笑しくなって、気まずさから目を逸らし。その後の言葉に彼の素が出ていたことなどには、とくに気付かず。
「…ありがとうございます」
払い終わった際には、もう一度御礼を。口元ははにかむように歪んでいただろうか。
先に僕に向けられた気遣いの言葉>>0:377を脳裏で反芻させ、しかしうまく言い出せないことに少しだけもごついてしまったけど、「…また来ますね」そんな不確かなことを口頭に乗せ、花を大切に抱えては、僕は彼女に「お先に失礼しますね」と会釈を送ってひとり、先を急いだ。*
―回想 了―
(75) 2014/10/03(Fri) 09時半頃