―自宅へ―
……ゴチソーサマでした。
[他者を圧倒するような食べっぷりを披露した彼女の食指が漸く止まった頃、
そして、別れ際にもう一度、ご馳走になったことに対して簡単な礼を口にする。
それでも退屈なら、また誰か別の人間と――だなんて。
あんな、現実かさえ疑うような光景を目にした後で、そんな気力は残っていなかった。
正直な所、未だにあの体の何処にあれだけの量のケーキが収納されたのか、理解できないままでいるのだ。
今日はもう早い所寝てしまおう。そんな考えを抱きながら、部屋の鍵を回す。
扉を開いた途端漏れだす冷気に、ああ、冷房を切り忘れていたのだと気付いた。]
あー……きもち、
[機械によって調整された室温に安堵の息を漏らし、そのままソファに倒れこむ。
体が重い。もうこのまま眠ってしまおうか。一度閉じた瞼を薄く開く。]
(75) 2014/06/18(Wed) 23時半頃