[ここの大家である70絡みの老婦人に挨拶をする。東京にしては珍しい、住み始めて間もない人間にも気軽に話しかけてくる人だ。
本人は浅草生まれの葛飾育ちだと言っていたが、それにしては着ているシャツが大体ヒョウ柄なのが山岸五郎にはいつも気になっていた。
だがそんな事はどうでもよかった。]
『なぁに、またあの部屋?これで去年からもう3人じゃない。前の博士さんの時から続けてだし、嫌だわぁ……』
……3人目?
『そうよ、五郎ちゃんが来る前から…今度の子は半年だけだからって言うから、何事もないかと思ってたのに、これじゃ借り手がいなくなっちゃうじゃない。
お祓いもして、部屋も取り換えたのに…ただでさえ家賃安いのに、勘弁してほしいわ、全く……』
あの、それってどういう……
[大家に聞き返そうとしたけれど、ちょうど再び警察に呼ばれたので、それ以上は聞けずじまいになってしまった。]
(74) 2016/09/27(Tue) 00時頃