−屋台村→巨木の方へ−
バイバイ、おじ…お兄さーん!
[綿菓子を貰ったからか、すっかり気を許した面持ちで手を振り男に別れを告げる。
袖の近くでヒラヒラと舞っていた蝶はホログラムだろうか?とミツボシは一瞬思ったが、どうやら男の話を聞く限りこの場所はそれほど電子技術が発達しているようではないらしい。
その代わり、旧世代のアミニズム的な信仰の下、この祭りが行われていると聞いた。花祭り。
そもそも、ミツボシの住んでいた世界では祭りなど開かれなくなって久しい。
だから、少女にとっては、初めてのお祭りなのだ。]
おぉー…なるほど、糖をひも状に溶融させてるだけなんだなー…キシシ、糖の粘着力があるから幾重も絡みついて綿のようになるわけねー……構造は単純なのに不っ思議ー…
[あむあむ、と妙な咀嚼音を出しつつ、屋台通りを巨木に向けて抜ける。
綿菓子の男と話をした結果、巨木――薄墨桜に向かえば迷わないだろうと推測がついた。]
……外神(ことかみ)、ねぇ。
[綿から覗いた芯棒をペロリと舐めながら、少女は先程の男がチラリと口にした言葉を反芻した。]
(73) 2015/04/19(Sun) 14時半頃