さて、何日保つかな。 [カウンター後ろの戸を開け、食料の在庫をチェックする。 いくら半月分の食料を蓄えているといっても、 あくまで自身と時折訪れる常連たちであればという話だ。 このペースなら、あっという間に底が見えてしまう。] 西へ……ね。[五回、どこへ行くんだと尋ねた自身に、 五回、皆が同じ返答を口にした。 NYでは「西は被害が少ない」なんて話があるらしい。 ある者は「西には特効薬がある」と言い、 助手席で包帯と紐でぐるぐる巻きにされ不安そうな 表情を浮かべた少女と共に去っていった。 まだハイスクールに通うような年頃だった。 昨日より格段に増えた車の一部は、 そんな噂を信じた者たちで構成されているのだろう。]
(72) 2020/10/22(Thu) 21時頃