……その方がお好みですか?[この蝶が自分のような変わり種を選んだ理由は分からない。暇潰しなのか物珍しさなのか。どちらにせよ良いイメージが抱けず思わず身動ぎすれば、体躯を支える腕の力が弱まったような気がして。無意識に俯いていた顔を上げる。そこで耳にした言葉により遡るは少し前。金魚と戯れていたところに突如現れた端麗な人。誘われるまま、連れられるまま後を追った黒い革手袋越しの手を思い出せば、口元を強張らせて。]──ッ、…ん、…[触れる薄い男の唇。掠めるだけであるというのに赤らむ頬は暗がりにも悟られてしまったか。どちらにせよらしくない己の変貌に瞳を揺らしつつ、強請るように掠めた唇を追ったならば。蝶はどのような貌をされるだろうか。]
(70) 2014/09/15(Mon) 00時半頃