隣って……、もう来てるじゃねェかァ。
美味けりゃ……?
なんでィ、団子の味なんて酒の味に負けちまうんじゃねェのか……?
[大きく吸った空気の残量が無くなって、また口から息を。『酔っ払いとだけは結婚しねェぞ』と密かに心の中で誓いながら目の前に差し出された其れを見て『あ、』と声を漏らす。
差し出されたみたらしは決して自慢などでは無く、僕に分け与えようとしてくれているらしい。おずおずと『い、いいのかィ?』なんて上目遣いで問い手を伸ばし――今迄邪険していたことを少し後悔。
もしかしたらそんなに悪い奴じゃァなかったのかもしれないなァ。でも、酒と団子が合うのかなんて僕にはまだ分からないから許してくれよな。
両手のみたらしを交互に見比べては江戸には良い奴ばっかりだ、というとっちゃんの言葉を思い出してにこり。
帰ったらとっちゃんに教えてやらなくっちゃ、と思いながら頬張った団子の味は美味しくて表情を綻ばせた。]
(70) 2015/01/18(Sun) 22時半頃