―回想・時計館2-W(自室)―
[青年に割り振られたのはWの部屋。
室内には最低限の調度品しかないが、
日頃の暮らしを考えれば充分過ぎるくらいだった。
荷物を床に投げ出すとベッドに飛び込む。
ふかふかのベッドに横たえるのはどれくらい振りだろうか。]
うーん…。
疲れてるから今日はもう休みたいところだけど…。
[そのまま眠りに落ちてしまいたい衝動を抑えて起き上がり、
部屋の中央付近にしゃがんで手をついた。そして、
小さく小さく祝詞にも似たそれを唱えればふわりと白い外套が靡く。
仄かな青い光を帯びて床一面に浮かび上がるのは魔方陣。
それに呼応するように己の身体に刻まれた紋様も僅かに熱を帯びた。
室内に施したのは簡易な、“邪”を退ける術。
かつてその身に宿した破邪の力で栄えた一族の血は引けど、
末端とあってはそれを滅する程の強い力は有していない。
青年に出来るのはせいぜい、彼らの牙を防ぐことくらい。]
(69) 2012/05/19(Sat) 14時半頃