― 戴く少し前>>61 ―
[ありがとう、と告げた自分の声も笑顔も完璧だった『つもり』なのだけれど、彼には何か察せられてしまったよう。]
―――――――――
[『優等生』然としないその態度に、ゆるりと瞳を細めてみる。それはここに来て自分が初めて見ることのできたものだと思うと、楽しくて。自分が彼に居心地の悪さを覚えさせているなどと少しも思わずに、その表情を眺めている。
しかしそれはすぐに取り繕われて。それらは中々に人間めいていて楽しかったというのに。はっとした表情なんか、特に。
取り繕った笑顔になど用はなく。それには何の魅力も感じない、なんて。自分のことは高い高い棚に上げ。
仕方ない、癖なのだ。そもそも、人の感情を見ることが好きなのだから。人の感情を測ることが好きなのだから。―――それが上手いか下手かは別にして。
彼はそれから配膳へと戻ったか。さすがの自分も、二度もその手を止めさせることはない。]*
(68) 2015/08/24(Mon) 23時半頃