[女中に借りた服から寝間着へと着替え、こっそりと部屋を出る。
向かう先は怒鳴り声を聞いた、父親の書斎。僅かに開く扉の隙間からそっと覗きこんで。
あっ、という声が出なかったのは奇跡に近い]
「砲撃が誰によるものかはどうでもいい。鼠が私達のチーズを奪わないように、徹底的に叩き潰せ」
[皇帝の下、優秀な文官であった祖父は一代で屋敷の大部分を建てた。
祖父が亡くなり、莫大な遺産と十分な地位は父へと引き継がれ、父も持ち前の要領の良さで階級を上げた。
文官であるはずの父が出てきた。そうしてようやく事態の大きさに気付くのだが、それでも彼女はどうすべきかは分からない]
(…それでも、あれはあんまりだわ)
[父の手に握られた紙は、喧伝するように大通りで配られたビラと同じものだった。
きゅ、とドレスの裾を握る。先程会った革命家の叫び声が頭に響いた**]
(67) 2014/09/06(Sat) 01時頃