[くるくる、ぽん。
くるくる、ぽん。
きつね色の丸いケーキが宙を舞っては、皿へと着地する。
フライパンを器用に操る腕の持ち主は、しかし相変わらず回想に耽っているようだ。]
……―…― ……
[思えば、あの時から、だった気がする。
新天地での任務、それを考えれば、自分に我が身を守る義務があることくらい自明の理だ。
しかしあの時、必死に宿主を求めるティソの姿に…体内回路の、どこかがスパークした。
共生を謳っていても、相手は寄生生物。
宿主となることで己の身にどのようなリスクが降りかかるか、それが分からない以上は、いっそ見殺しにしたって然るべきであったろうに。
――わたくしが、助けることができるなら。
あの時自分はそう思って、それから、レンズに映る景色が少しずつ変わっていったのだ。
……まあ、その契機では結局自分は役立たずだったのだけど。]
(67) 2013/07/22(Mon) 19時頃