──慶一のこと──
[先日からうちに泊まっている客人である刑部慶一は大学生らしい。
研究のためにこの村に来たと言った彼は、オシャレな格好をしていてとても目を引いた。]
(慶一さんって照れ屋なのね。
それとも、あれが今の都会風なのかしら。)
[初対面の時にはあまり顔を真っ直ぐ見れなかった。
村の人は顔見知りが多いからとても新鮮だったのを思い出す。
女に虫の話はと遠慮してくれたこと知らない櫻子は、勝手に慶一が口数が少ない人だと思い込んでいた。]
(あ、でも、聞けば答えてくれるから、口数が少ないのが格好良いのかしら。)
[夕飯は何時とか、好き嫌いはありますか?とか、都会の話を聞こうとつい慶一への御用聞きを櫻子が担った自覚はある。
その距離の近さは田舎ならではだっただろう。
慶一や、他の誰かから指摘されなければ櫻子には気付けない。]
(64) 2016/07/16(Sat) 23時半頃