[意識が浮上した時、マーゴはまだ自分の腕の中に居た。汗で張り付いた髪の毛をそっと掌で除けてやる。
安らかに寝息を立てるその寝顔が、愛おしくて。
思わず腕の力を強めて、抱き締めた。
自分以外に、彼女のこの姿を知っている奴がいると思うと、気が狂いそうだったけれど。
今は彼女の身体を綺麗にするほうが先だと考え直して。
眠るマーゴの額に、そっと口付けて、起こさぬようにベッドから降りた。
キッチンには買い出しから戻った祖母が夕餉の支度をはじめていた。
お嬢さんは?と訊かれたから、疲れて眠ってるとだけ答えて。それから手桶に沸かしたお湯とタオルを持ち、自室に戻って彼女の身体を丁寧に拭った。
食事が出来上がって、マーゴの身体を揺すってみたけど、随分ぐっすり眠っているようだったから。
結局彼女が翌朝目覚めてくるまでは、そっとしておくことにした。]
(63) 2015/04/21(Tue) 16時半頃