そっちは飽いちまってる。
せめて、色めいて月輝と喩えて見せろや。
[彼の仕草は露骨であったが、取り繕うには綻びが大きく。
つい、喉を震わせて彼の態度を茶化した。>>57
媚を売ることもなく、直裁に打ち返してくる言葉を混ぜ返し。
彼が花らしく取り繕わず、眉間に渓谷刻めば、指摘の一瞥。
眼差し同士がぶつかって、刹那触れ合う蝶と花の視線。]
相も変わらず生真面目が服着て歩いんな。
―――…花籠で其れを言うかい?亀吉よ。
[唇を歪めて彼に問う正道。
真実照らす昼は過ぎて、今は欺艶の夜。
素直に腰を落ち着ける彼の膝に腕を伸ばし、重いばかりの蔵書を事も無げに払った。勝手気まま、傍若無人は蝶の本懐。
暴挙めいた振舞いへ新たな文句をつけられる前に、男はごろりとソファに懐く。
当然頭部は彼の膝へ落ち、書物と同じだけ―――あるいはそれ以上に外の世界が詰まった頭蓋を乗せた。]
(63) 2014/09/17(Wed) 22時頃