[お兄さん、と呼びかけたのは憂うその雰囲気が少し大人びて感じたからかもしれない。
級友たちは騒がしくて、こちらを囃し立てるばかりだから。
此方は年頃に比べてはチビの方だが相手はどうだっただろう?
名前を教えられ、ぱちりと目を瞬かせる]
たかむら…………、あの、お屋敷の?
あきのしん、くん。
………あ、あの、来島祥子……祥子で良いよ!
[問われ、名乗っていなかったことに気づく。
慌てて返事して、しかし鬼渡しが楽しげだと言われれば不安げに眉尻が下がった。
ふるふる首を振れば耳元にぱさぱさと髪が揺れる音]
あきのしん君は、幽霊怖くないの?
私は、……だって摘んで来いって言われたんだもん。
摘んで来なきゃ、教科書返してくれないって……。
[思い出した、摘んだ理由。
ぷくりと頬が膨らんで、口が富士山のような形を描く。
また新しい涙が滲んで、ごし、と袖で乱暴に目元を拭った]
(62) 2016/11/16(Wed) 00時半頃