>>36
フランシスは元気がな。
[暗い道を歩きながら、大きな背を丸め、でも、男は思い出し笑いを浮かべた。
貴族から放られたと泣く褐色の女が死出に導かれるのを止めたのは、彼女がフランシスでなくても一緒だっただろうけれど、
その褐色の肌とはっきりとした目鼻立ちは、当時の男をぼんやりさせるに十分だった。
死にそうな彼女を止めて、話をきいて、いつのまにか一緒に泣いてた。]
だいじょうぶだよ。
死ぬことはないよ。
もったいないだべ。
[慰める言葉に説得力はまるでなかっただろうけれど、
男は思い浮かぶありとあらゆる賛辞を彼女に浴びせただろう。
そして、懐から地味な布を取り出すと彼女の顔をごしごし拭いた。]
俺は、こんなに綺麗な人、はじめて見ただ。
[そう言って笑う男の顔は、一緒に泣いた涙でべちょべちょだったけれど。]
(62) 2014/09/03(Wed) 19時半頃