[生き残った人、そうでない人。
自分は、正門近くの壁に、もたれかかった状態で発見されたらしい。背中、腕、足に怪我を負っていて、おそらく、至近距離からの衝撃に吹き飛ばされたのだろうということだった。実際、最後の記憶は、グラウンドだった。
起き上がる直前、呼んだ名前。それを聞いていた看護士はからかうように、好きな人の名前?といったような事を言いかけ、口を噤んだ。そして目がそらされる。彼女に何があったか、思い出したのだろう。
何故、その名前が出たか。自分でもよく分からなかった。ただ、最後に守ってくれたのは。そう、彼女だった気がして。目の前で、何かから庇ってくれた気がして。
だから、名前を呼んだんだと。はっきりとはしない。ただ、それだけはありありと、思い出せて。確信があった。]
(61) perigord 2010/08/14(Sat) 10時半頃