[その日のお昼、研究室を訪れたりいなは、いつになく暗い顔をしていた。ドアを開けた錠の顔を認めるなり、お弁当を差し出しながらものすごい勢いで頭を下げる]
ごごご、ごめんなさい……!
[開口一番謝られ、錠はきっとわけが分からなかっただろう。お弁当が失敗したと思われたかもしれない。
顔を上げたりいなは、泣きそうな顔で錠を見上げた]
母と姉に、ばれちゃい、ました……。
まだ、どんな人なのかとかは、言ってないです、けど。
家に帰ったら、尋問、されます……。
[錠が年齢差を気にしていることは知っている。りいなは年齢差なんてなんとも思ってないけれど、教授と教え子、あまり大っぴらにしていい関係でないことくらいはわかる。けれど、ばれてしまった。
そしてばれてしまっては、りいなには隠し通すことも、嘘をつくことも、できるわけがなくて]
先生のこと、お話ししても、いい、ですか?
会わせろとか言われそうです、けど……。
[まだ錠に、そこまで覚悟を強いるつもりなんかなかったのに。申し訳なさでいっぱいで、泣きそうな顔のままりいなはまた頭を下げた]
本当に、ごめんなさい。
(59) takicchi 2013/10/14(Mon) 00時頃