そうですね……、ひとまずは宿をとらないと。
[ブルーノ司祭がお役目を果たされれば、それを迎えればよし。
でなければ――自分ひとりで、この街に生じたという悪魔を祓わねばならないのだし]
……そのあとは、腹ごしらえと情報収集といきましょうかね。
[二頭の馬を引いて、辿り着いた宿の名は、黄金の林檎亭。
竜を連れた女への態度とは裏腹。
宿の主人は、かれが高位聖職者の従者と知れば、あっという間に上等の部屋をひとつ用意した。
藁ではなく綿を詰めたベッド、麻ではなく絹のシーツ。数人が談笑できそうなテーブルと周囲の空間。
ただ、あくまでもひとつである。
チャールズに対しては、藁束に布をかけただけの寝台のある、狭く粗末な部屋が用意されただけだった。
むろん、そんな部屋でも、屋根と寝具があって、扉に鍵がかかるだけ、一般的にはマシというものだったが]
(59) 2015/08/22(Sat) 03時半頃