ああ、急がないと昼見世の時間に遅れる…。
[もうすっかり高くなった日を見上げながら呟く。昼見世の時間は未の刻だ。この時間は遊女《商品》に手を付けようとする輩が湧く。同時に足抜けを狙う遊女の目星をつける絶好の機会。遅れたら楼主からの怒りを買うだろう。楼主からの折檻を思い浮かべ、溜息を着く。]
…帯留めなんて全く分からないからなあ…。誰か選んでくれそうな人いればいいんだけど。
[そう呟きながら商店街を歩くと、異人>>51と女性>>55の姿が目に留まる。片方は白粉を塗った顔から芸者だろうか。…昔から着飾る女性と……一部の陰間の姿を知っている僕は、男同士で手を取る姿をさも珍しくなさそうに見る。]
浮世なんていうけど、そんなの一部の人間だけだな…
[思わず漏れた声にはっとなるが、きっとこの声は二人組に届いてはいないだろう。もし聞こえていたとしても、いつもの笑顔を貼り付けて適当に誤魔化すだけだ。気まずさを少し感じながら、ここから少し歩いた先にある呉服屋の方へ足を向けた。]
(59) 2015/01/18(Sun) 20時半頃