あ……。
[開かれた扉。その向こうに広がる闇に、立ちすくんだ。
私は夜を生きる生き物で。だから、私にとって、それは親しいもののはずなのに。
どうしよう。その空を飛ぶことが、今はとても怖い。
暖炉の奥の梯子を登った時のことを思い出す。あの時は、私の前にフィリップがいてくれたけれど、この空を、今私は一人で飛ばなくてはならなくて]
…………。
[呼吸を整えて、しっかりしなさい、と私は自分に言い聞かせる。
しっかりしなさい、マユミ。あなたは、何よりも孤独を愛していたはずよ。
さみしさを思い出してしまったけれど、二人とも無事に脱出して、自由を手に入れられたのに。これ以上何を望むというの]
……長居、してしまってごめんなさい。
泣いたりして、迷惑をかけてしまったわ。
[落ち着いた声音を、取り戻せていたと思う。私はそう言うと、扉へと歩み寄って。
入り口で振り返ると、口元に笑みを作った]
(58) takicchi 2015/07/19(Sun) 02時頃