[ 暫く進んで行くと、思いがけず馴染みの本屋>>11 がある通りへと出た。小さな構えを覗けば、月始まりだからだろう、山と積まれた本が並んでいるのを確認する。
気まぐれな考えが浮かんで、>>34 バイトの店番に並んだ本の一冊分の代金を手渡した。いつもの彼はと尋ねれば、本を届けに行った旨を聞く。やや危なっかしい手つきの店番が作業を終えるまでに、彼が戻ればよろしく、とだけ伝えた。
――3年ぶり、と帯に書かれたそれを受け取って、筆記具程度しか入っていない鞄へとしまい込む。
馴染み、とは言っても使う資料を買いに来る程度で、本らしい本は殆ど買って読んだ事はなかった。
ただ、と。あの帯から推測するに、ある程度期待を受ける筆者なのだろう。読んでみて面白ければ以前のも、とそこまで考えて、シリーズ物だったらと思い至る。
ナンバリングはされてなかったように思うが、はっきりとは確かめてはいない。
しかし既に本屋を出た後で、立ち戻る気も、鞄から改めてカバーの掛かった本を取り出す気も起きなかった。
……そのときもまた来れば。都合のいい事に明日から休暇なのだ。そう己の無精に着地点を付けて、賑わう通りへとまた足を進める。]
(58) 2014/10/01(Wed) 07時頃