― 大木のうろ ―[大須の別荘であってそうでない場所。その2階の廊下の突き当たりで、話をしていた。言い難いことも、遠慮なく聴いてくる楓馬に、嗚呼、彼だな……と思った。おそらく茨に突っ込んだ時に傷ついたのだろう彼の頬に、指を伸ばしたところで世界が暗転した。――……嗚呼、あの時触れたのは、やはり夢だったのか。そんな風に思った。意識は冷たい闇の中。それでも、夢の中で探すのだ。2つのいつも傍にあった温もりを。] ―――……んっ。[自分を呼ぶ声が聴こえた。とても良く知っている声。瞼を震わせながら伸ばす手。その手が何か触れるより前、己の頬に温もりを感じる。でも、それは1つだ。声も温もりも……―――。]
(56) mitsurou 2011/05/26(Thu) 01時頃