[短くなった煙草を投げ捨てる。その代わりに地面に放りっぱなしだったライタと煙草の箱を拾い上げ、ポケットに仕舞った。]
あれほどやれ彗星だやれ月蝕だと浮かれていたわりに奴ら、終わるってわかったときから望遠鏡を覗こうともしない。
厭んなる現実だ。
[新たな煙草を取り出そうとした手は止まる。問う声>>23には緩慢に首を振った。]
俺たちが出来るのは観測して計算をして、予測を立てることだけだ。わかっちゃいることもあるが、本当にそれが真実かどうかは確かめようもない。
[どれほどの大きさの隕石が、どれくらいのスピードでやってきているか。数字は頭に浮かぶけれど、それは途方もないもので実感などまるでない。小さな地球の、更に小さな国、その中の更に極小の天文台から見上げる宇宙はあまりに広大で、絵空事のようにすら感じてしまう。]
天文台の職員が逃げ出せば
一般人も余計に不安になるだけなのにな。
それを見越していれば、あんな愚行はしねえよ。
[淡々と零していく、愚痴めいた言葉。今更憤っても、嘆いても、何も変わらないというのに。]
(56) 2012/07/20(Fri) 12時頃