― 広間 ―
[父に呼ばれて降りてきた広間。
聞かされた最初の話――お気に入りのメイドが食い殺されていた、という話に、目が丸くなる]
なんですって……!
人狼なんて、お伽噺の存在……ただの、噂話でしょう、お父様!
[悲鳴じみた問いは、続く説明に否定され、力が抜ける]
ああ……なんて事……どうして、こんな事に……。
この屋敷の中に、人狼がいる、という事なの、お父様?
[否定が返る事を期待しての問いかけは、決意を込めた宣によって否定され、表情が陰った]
そう……それならば、早く見つけ出してしまわないとなりませんわね。
そんな危険なものを、のさばらせておくわけには行きませんわ。
[間を開けて、顔を上げたグロリアの表情にあるのは、強い決意のいろ。
その首筋に、淡い朱色の小花が群れ咲くような痣が浮かび上がっている事は、今は服の下、誰の目にも止まる事はない。*]
(56) 2025/02/15(Sat) 15時頃