(私の方がいじめられてるのに)
[なんて思いながら何のことだろうと首を傾げていたら、すっと池の方を指差されて。
ああ、鯉をか!と理解するまでにちょっと時間がかかった。
ごめんと素直に謝れば、少年は良いんだと許してくれた。
サラサラと風に揺れる髪の毛に、涼しげな目元。すっと伸びた背筋に着物がよく似合った。
何の神様なんだろう、そんなことを思いながら池の水を眺めていたら、いつのまにか彼はいなくなっていて。
なんてことない思い出。むしろ彼はきっと覚えていないだろう。
けれどあの思い出のお陰で、自分は頑張れた。
“池の鯉をいじめていた私を止めた彼がいるように
きっと私を助けてくれる誰かが現れる”
そう思う事でどんな辛いことも我慢できたのだ。
だから、彼は私の英雄。私の憧れ。
彼の様な神様になりたい―――そんなことを言ったら笑われてしまうかもしれないけれど]
(56) 2013/08/12(Mon) 02時頃